性器ヘルペスとは、単純ヘルペスウイルスによる感染症です。
日本では男性の場合、淋病・性器クラミジアに次ぐ性感染症です。女性の場合は、性器クラミジアに次いで2番目に罹患者数が多いといわれています。
男性では30~40歳代、女性では20〜30歳代で多く、全体では10代後半〜60歳代まで幅広くみられます。
性器ヘルペスとは
「ヘルペス」ときくと、唇に水ぶくれや潰瘍ができる「口唇ヘルペス」をイメージする方も少なくないでしょう。
口唇ヘルペスや目の角膜に感染するものは「単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)」、性器に感染するものは「単純ヘルペスウイルス2型(HSV-2)」が原因であることが一般的です。
しかし、オーラルセックスにより口唇ヘルペスが性器に感染することもあります。
そのため、発症部位によってウイルスを明確に区別することがなくなってきているのが現状です。
どちらも痛みやかゆみ・水ぶくれなどの症状が現れ、一度ヘルペスウイルスに感染すると体内に潜伏し続けるのが特徴です。
性器ヘルペスは再発することが多いです。一度症状が落ち着いたからといって放置せず、検査や治療を受けるようにしましょう。
性器ヘルペスの感染経路
性器ヘルペスはヘルペスウイルスが存在する部位に接触することで感染します。
水ぶくれなどの明らかな病変部位との接触だけでなく、無症状でもウイルスが存在していれば感染する可能性があります。
ここでは、具体的な感染経路について解説します。
性器ヘルペス感染経路①キスなどによる口と口の接触
口の粘膜や唇にヘルペスウイルスが存在していた場合、キスなどによる接触で感染します。その他、唾液などからヘルペスウイルスがうつる可能性もあります。
ヘルペスウイルスは無症状のまま潜んでいることもあるため、見た目だけではウイルスに感染しているかどうかは分かりません。
性器ヘルペス感染経路②性器同士の接触や膣性交
性器ヘルペスに感染していた場合、性器同士の接触やセックスによる感染のリスクがあります。
また、性器の粘膜だけでなく分泌液にヘルペスウイルスが含まれている可能性が考えられます。
性器ヘルペス感染経路③オーラルセックス
オーラルセックスでは、ヘルペスに感染した口の粘膜や唇から性器へウイルスが感染します。
一方、ヘルペスに感染した性器から口の粘膜や唇へウイルスが付着することもあります
性器ヘルペス感染経路④アナルセックス
アナルセックスによってヘルペスウイルスが肛門や肛門周囲へ感染することがあります。
ヘルペスに感染したペニスからアナルないしはアナルからペニスへ感染することも考えられます。
アナルセックスで性器ヘルペスに感染した場合、直腸の粘膜にも症状が現れることがあります。
性器ヘルペスの症状
性器ヘルペスは2〜10日程度の潜伏期間を経て発症することが一般的です。
特に初めての感染では症状が強く出ることが多く、激しい痛みによって歩行困難や排尿困難になることもあります。
ここからは、性器ヘルペスについての詳しい症状について解説します。
性器ヘルペスの症状①性器のかゆみや違和感
発症して間もない頃は、性器や肛門周囲のかゆみや違和感が現れます。
そのような症状に続いて、下記のような症状が出現します。
・倦怠感
・発熱
・鼠径部(リンパ節)の腫れや痛み
性器ヘルペスの症状②水ぶくれ
その後、刺激感と共に赤みが増し、水疱(水ぶくれ)が多数出現します。男性では亀頭や陰茎、女性では外陰部に水ぶくれができやすいです。
さらに、臀部や太ももまで病変が広がることもあります。水ぶくれに伴ってかゆみや痛みなどの症状も強く現れることが一般的です。
また、性行為によって膣内に細かな傷が出来やすいため、外陰部だけでなく膣の奥に位置する子宮経管や膀胱にまで感染が広がるリスクがあります。
そのため、男性よりも女性の方が重症化しやすいのも特徴です。
性器ヘルペスの症状③潰瘍や痛み
水ぶくれが破れるとじゅくじゅくとした潰瘍を形成し、強い痛みを伴うのも性器ヘルペスの症状のひとつです。
下着で擦れる度に激痛が走ることもあります。このような症状は2~3週間すると落ち着くことが一般的です。
性器ヘルペスの症状④排尿痛
ヘルペスの病変が尿道口付近にみられる場合、排尿時に尿が患部に付着することで痛みを伴うこともあるでしょう。
排尿時に痛みを伴う場合、日常生活にも支障が出てしまいます。女性の場合、膀胱にまで炎症が及ぶことも多いです。
性器ヘルペスの検査および診断
性器ヘルペスは症状についての問診や病変部位の視診によって診断が可能です。
その他、病変部位の粘膜や分泌液を綿棒で拭ってウイルスの有無をしらべたり、血液検査によりウイルスの抗体を調べたりすることもあります。
性器ヘルペスの治療
性器ヘルペスの治療には抗ヘルペス薬を使用します。抗ウイルス薬によりヘルペスウイルスの増殖を抑えることで炎症を抑制する効果が期待できます。
しかし、繰り返しになりますが一度ヘルペスウイルスが体内にすみついてしまうと消滅することはありません。
しっかりと治療を受けて再発を抑えることが重要です。正しい治療を行えば再発の頻度は徐々に減り、症状も軽くなっていきます。
身体に違和感を覚えた場合やパートナーにヘルペスを疑うような症状が現れた場合には、すみやかに検査を受けるようにしましょう。
性器ヘルペスのリスクや予防法
性器ヘルペスが疑わしいと感じる場合、医療機関への受診を躊躇してしまう方も少なくないでしょう。
ここでは、性器ヘルペスを放置するリスクや予防法について解説します。
性器ヘルペスのリスク①日常生活への支障
性器ヘルペスにより陰部に水ぶくれや潰瘍ができ、強いかゆみや痛みが現れることで日常生活に支障が出る場合があります。
例えば、病変部位と下着が擦れる度に激痛が走るため歩行が困難になることもあるでしょう。
その他、排尿時の強い痛みに悩まされることもあります。このような状況が続くことは非常に辛いことですので、早めに治療を開始することが大切です。
性器ヘルペスのリスク②出産時の垂直感染
性器ヘルペスウイルスは、出産の際に母親から新生児へ感染する「垂直感染」が起こる可能性もある性感染症です。
この先、パートナーと子どもを望むのであれば、パートナー同士で治療を受けておくと安心です。
性器ヘルペスの予防法①病変部位に直接触れない
水ぶくれや潰瘍など明らかな病変がみられる場合には、直接触れないように注意しましょう。
ヘルペスに感染していた場合、尿や分泌液にウイルスが含まれていることもあります。
性器ヘルペスへの感染が疑わしい時にはセックスなどの直接的な接触を避ける必要があります。
性器ヘルペスの予防法②コンドームを使用する
性器ヘルペスは感染部位への接触が原因として起こります。
オーラルセックスの場合でも、コンドームを使用することで口から性器ないしは性器から口への感染を避けられる可能性があります。
コンドームを使用することを検討しましょう。
性器ヘルペスの予防法③検査を受ける
性器ヘルペスは初回感染時には症状が顕著に現れることが多いですが、再発の場合には軽い症状で済むこともあります。
そのため、治療せずに放置してしまうケースも少なくありません。
また、無症状のまま体内に住みついていることもあるため、症状が出ていないから大丈夫とはいいきれないのです。
感染予防のためにも、パートナーと共に単純ヘルペスウイルスの感染の有無を検査しておくと安心です。
性器ヘルペスについてのまとめ
性器ヘルペスは、細かい水ぶくれが多数出現し、激しいかゆみや痛みが現れるのが特徴的な性感染症です。
時には潰瘍を形成し、病変部位の痛みによって排尿困難や歩行困難が引き起こされることもあります。
一度感染すると体内に潜伏し、再発することが非常に多い病気です。
疑わしい症状が一度落ち着いても、念のため感染の有無を調べる検査を受けるようにしましょう。