淋菌
淋菌とは
淋菌感染症はNeisseria gonorrhoeaeを起因菌とする感染症で、性的接触による感染から様々な症状が引き起ります。
避妊をしない性行為での感染確率は30%~50%と言われており、感染リスクが高い性感染症です。
また最近の疫学的研究によると、淋菌感染症によりHIVの感染が容易になると報告されているため、その意味でも重要な疾患です。
しっかりと治療をすれば完治する感染症ですが免疫ができることはないため「再感染」も含め予防が必要な性感染症です。
淋菌の感染者数
淋菌の感染者数は2002年~2003年をピークに減少し、2016年以降ほぼ横ばいであったのが、2020年以降男女ともに増加してきています。
さらに2018年からは20代で、2020年から25~34歳で増加を始め、2021年には全ての年齢で増加に転じています。
淋菌の感染経路
淋菌に感染している部位に接触することで、淋菌感染症を引き起こしてしまいます。
淋菌が侵入する部位
性行為によってこれらの部位に直接触れると感染してしまいます。
感染する行為とは
・陰茎を膣内に挿入する
・陰茎や膣を舐める
・キスをする
・陰茎を肛門に挿入する
・母子感染
淋菌に感染する行為
陰茎を膣内に挿入する、陰茎や膣を舐める行為で直接感染している粘膜に触れることで性感染症を発症するリスクが高くなります。
そうすることで性器・口・喉・肛門や直腸、妊娠された女性であれば母子感染を起こします。
淋菌の症状
淋菌に感染すると以下のような症状を引き起こします。
男性より女性の方が自覚症状に乏しく、受診機会があまりないことから報告数は男性が多くなっていますが、場合によっては無症状のまま経過することも多い疾患です。
男性の主な症状
一般的な症状は急性尿道炎による膿みや粘液性の分泌液が出現し、排尿時の痛みがあります。
症状が軽いと言われるクラミジアと比べ、淋菌性尿道炎は発症が急激で症状が強い点が特徴です。
粘液性のものもクラミジアと比べると濃く黄白色をしています。
まれに無症状の方もいらっしゃいますが、自覚症状のないまま感染が前立腺まで進行するケースがあるため、むしろ危険といえます。
前立腺が淋菌に感染すると、高熱・排尿困難などの症状が起こります。
女性の主な症状
男性と比べると症状が軽いのが女性の特徴です。
代表的な症状として、おりものの変化(色の変化 / 量の増加)や性交時の痛み・不正出血などがあります。
しかしいずれの症状も気づかない場合が多いため、半数以上の方が無症状で過ごしてしまい放置した状態から治療を開始する方も多いです。
放置すると卵管炎・骨盤内炎症性疾患・肝臓周囲炎などの原因になります。
また放置したまま妊娠・出産をすると新生児へ淋病が感染する可能性もあり危険といえます。
のどの症状
咽頭炎を起こし、のどの痛み・腫れ・発熱の症状などが引き起こされます。
しかし症状が出ても風邪程度と思い、あまり自覚しない方が多いです。
目の症状
まぶたの腫れや結膜の充血、白目がゼリー状になったり膿が出る淋菌性結膜炎が引き起こされます。
直腸の症状
自覚症状がないことが多いですが、むずむずしたかゆみや不快感、痛み、出血を伴う症状が表れ、下痢・血便・ねばりのある血便などがみられます。
淋菌での感染で起こる病気
男女ともに淋菌感染症を放置すると、不妊症を含む様々な健康問題が発生する恐れがあります。
女性の場合、淋菌は膣から子宮、さらに卵管を経て腹腔内へと感染や炎症を広げることがあります。
卵管は卵子と精子の出会いの場であり、この通路が淋菌によって塞がれると、卵子の移動や受精が困難になります。この状態が持続すると、最終的には不妊の原因になり得ます。
さらに、腹腔内への感染拡大は臓器間の癒着を引き起こすことがあり、これにより臓器が異常に結合し、激しい腹痛や他の腹部疾患を引き起こす可能性があります。
男性では、淋菌は尿道から始まり、精管を経て精巣上体へと感染が広がります。
精巣上体は精子の生成に不可欠な役割を果たしており、ここに感染が広がると、健康な精子の生成が妨げられます。これにより、精子の質が低下し、最終的には不妊のリスクを高めることになります。
これらの淋菌による合併症は、早期発見と適切な治療によって防ぐことができます。
性感染症の疑いがある場合は、迅速に医療機関を受診し、指示に従って治療を受けることが重要です。
淋菌の潜伏期間
潜伏期間というのは、感染してから症状が出るまでの期間のことを言います。
淋菌の場合2日~10日ほどです。
淋菌は自覚症状があまり出ないため症状が出た時期から感染した時期をさかのぼり感染日を計算することは困難であり、いつ淋菌になったのかははっきりとはわからないことが多いです。
複数のパートナーがいる場合は、どの相手から感染したのかを特定することも難しいと言えます。
当院の淋菌検査方法
淋菌の症状がある場合、症状が疑われる箇所に対して検査をします。
男性器への検査
尿検査
女性器への検査
膣ぬぐい検査
咽頭・目・直腸の検査
咽頭 うがい液またはぬぐい検査
目 眼脂拭き取り検査
直腸 肛門周辺のぬぐい検査
男性では尿を、女性では子宮頸管(子宮の出入り口)をぬぐったものを検体として検査を行います。
のどに感染している疑いがあるときには、うがい液もしくは咽頭をぬぐった検体を検査に出します。
目に感染している疑いがあるときには、不織布し眼頭の眼脂を拭き取り検体を検査に出します。
肛門に感染している疑いがあるときには、肛門に細い綿棒を数センチ挿入して、肛門からの分泌液をとり検査に出します。
検査可能な時期
感染機会から数日で検査可能となりますが、感染時期を特定するのは難しいため淋菌の症状が出ているかたは一度検査の実施をおすすめいたします。
また無症状の方でも淋菌に感染し発症している可能性もあるため、パートナーがいる方はおふたり一緒に検査を受け治療も同時並行で開始していくことをおすすめします。
当院の淋菌治療方法
点滴治療1回
筋肉注射1回
淋菌へ感染している場合は1回点滴もしくは注射にて投与いたします。
また抗生物質に関しても処方しますので1錠飲んでいただければ問題ありません。
淋菌性結膜炎の場合には点眼タイプの抗菌薬を使用しながら、薬の内服を処方いたします。
淋菌の予防方法
淋菌感染は、感染した性器との直接的な接触によって起こります。コンドームの正しい使用は、淋菌の感染予防に非常に効果的です。
性交の際、特に男性器を膣内に挿入する時は、挿入の初めから終わりまでコンドームを着用することが重要です。また、オーラルセックスを行う場合にも、コンドームやデンタルダム(口腔性交用のラテックス製シート)の使用を推奨し、感染リスクを低減させます。
しかし、コンドームを使用しても感染を100%防ぐことはできません。リスクのある性行為をした場合、新しい性的パートナーができた場合、またはパートナーに性感染症の症状が見られる場合は、淋菌の検査を受けることが推奨されます。定期的な性感染症の検査は、自己の性的健康を守るとともに、パートナーを感染症から守る責任ある行動です。
感染のリスクを減らすためには、安全な性行為の実践、パートナーとのオープンなコミュニケーション、そして定期的な性感染症の検査が重要です。
当院の淋菌検査・治療費用
当院では淋菌に対し、患者様の症状が出ている箇所に対し検査ならびに治療を行います。
しかし淋菌と併用し、クラミジア・梅毒など他性感染症も発症している可能性が高いため、セットプランもご用意しております。
直接医師・看護師とご相談のうえご自身に合ったプランをお選びください。
淋菌のよくある質問
Q. 淋菌は自然に治ることはありますか?
答えは【No】です。淋菌感染症を治すためには、抗生物質による治療が必要です。
自然治癒を期待することなく、適切な医療措置を受けることが重要です。
Q. パートナーが淋菌に感染したと言っています。どうすればいいですか?
あなたも淋菌に感染している可能性が高いため、速やかに検査を受けることが推奨されます。
また、淋菌の感染がある場合、他の性感染症に感染している可能性も考えられるため、医師と相談の上、他の性感染症の検査も受けましょう。検査結果に応じて、必要な治療を受けてください。
Q. 淋菌を治療する薬を飲んだら、すぐに性行為をしてもいいですか?
答えは【No】です。治療を開始してから完全に治癒するまで、性行為は控えるべきです。
通常、治療後に再検査を行い、感染が完全に治っていることを確認するまでは、性行為を避けることが推奨されます。また、パートナーも治療を受け、感染がないことを確認することが重要です。
治癒が確認されないまま性行為を再開すると、再感染のリスクがあります。
Q. 一度淋菌になったことがあれば、もう二度となりませんか?
答えは【No】です。淋菌には免疫ができず、治癒しても再び感染する可能性があります。
再感染を防ぐためにも、安全な性行為の実践と定期的な検査が重要です。