梅毒の症状は進行度によって大きく異なるのが特徴です。症状が現れたり消えたりを繰り返すため、完治まで治療を継続することがとても重要となります。
今回は梅毒の症状を理解し早期発見・早期治療するための方法を解説いたします。
梅毒とは
梅毒は近年耳にしたことがある人も多い、増加傾向にある性感染症の1つです。昔から代表的な性感染症として知られており、戦前では不治の病として恐れられていた疾患です。
梅毒に感染すると全身に様々な症状が出ることがありますが、「偽装の達人」とも呼ばれ、微熱程度の軽い症状や、痛みなどがなく、自覚症状を感じにくいことがあります。
またしこりや発疹などの症状が出ても痛みがなく、しばらくすると消失するのが特徴です。
そのため検査や治療が遅れたり、治療をせずに放置してしまうと、長期間の経過で脳や心臓に重大な合併症を起こすことがあります。
妊娠中の危険性
女性の場合は梅毒感染時に妊娠をすると、胎盤を通して胎児に感染し、流産や死産、低出生、奇形が起こることがあります。(先天梅毒)
しかし、現在では治療薬も普及しており、早期の適切な治療で完治可能です。
一度感染しても感染を繰り返すことがありますが、再び感染しない予防と早期治療が大切です。
梅毒の感染経路
感染者と皮膚や粘膜で接触することで、細菌が侵入して感染していきます。
梅毒に感染する経路の多くは、性行為や性行為に似た行為によるものです。キスで感染することもあれば、稀なケースではありますが食器の共有や輸血などで感染することもあります。
ただし梅毒トレポネーマという細菌は、温度や湿度の変化に弱いため、皮膚や粘膜などから離れると数時間で感染力を失い、死滅していきます。
梅毒の症状
細菌感染後、症状が数段階に分かれて現れることが特徴的です。
初期症状(初期梅毒)
感染後、通常10日~90日程度の潜伏期間があります。
潜伏期間のあと初期症状として、感染部に痛みのないしこりや潰瘍ができることがあります。また股の付け根の部分(鼠径部)のリンパ節が腫れることもあります。潰瘍は1つまたは複数で、陰部・膣・ペニス・肛門・口内などに現れます。
治療をしなくても症状は自然に軽快しますが、ひそかに病気が進行する場合があります。
第二期症状(二次梅毒)
感染から3ヶ月程度経過すると、梅毒トレポネーマが血液によって全身に運ばれます。
この時期に、小さなバラの花に似ていることから「バラ疹」とよばれる、淡い赤い色の発疹が手のひら、足の裏、体幹部などに出ることがあります。発疹はかゆみを伴わないことが多いです。
その他にも発熱、倦怠感、頭痛、リンパ節の腫れや肝臓、腎臓など全身の臓器に様々な症状を呈することがあります。
第三期症状(三次梅毒)
感染後数年経過すると、ゴム種と呼ばれるゴムのような腫瘤が皮膚や筋肉、骨などに出現し、周囲の組織を破壊してしまうことがあります。
また、大動脈瘤などが生じる心血管梅毒や、精神症状や認知機能の低下を伴う進行麻痺、歩行障害などを伴う脊髄癆がみられることもあります。
現在では抗菌薬の普及などから、三次梅毒は稀であると言われています。
梅毒の検査および診断
問診や視診で症状を確認し、血液検査を行います。
血液検査では、血中の抗体を確認することができますが、抗体を検出するには感染機会から最低でも3週間以上の期間が必要となります。
当院では、梅毒検査はTP法とRPR法を行います。血中の数値を計測しながら計測しますので、完治まで患者さまに寄り添うことができます。
梅毒の治療
梅毒の治療は、ペニシリンという抗菌薬を用いて治療を行います。ペニシリンアレルギーがある場合には別の抗生物質を用いて治療を行い、症状の状態によって治療の必要な期間は異なります。
ペニシリンを用いた治療を開始した24時間以内には、発熱な頭痛などの症状が現れることもありますが、これは細菌が破壊されている反応によるものです。
医師が治療を終了とするまでは、治療を継続しましょう。
また性交渉などの感染拡大につながる行為は、医師が安全と判断するまでは控えましょう。
まとめ
梅毒の症状は一時的に消失することがありますが、自然治癒することはありません。梅毒トレポネーマは体内に潜んでいるため、しっかりと治療をしなければ、再び症状が悪化して現れるようになってしまいます。
自己判断の治療中断は行わず、医師の指示に従い治療を続けながら、検査で細菌の状況を確かめましょう。
また性行為によって感染するため、感染が確認された場合にはパートナーにも検査を受けるよう勧めてください。パートナーと同時に治療をすることで、感染を繰り返すことを防ぐことができます。
梅毒の治療を終えた場合でも再び感染することはあるため、性行為の際にはコンドームを用いることで感染リスクを下げます。
その他の、性感染症の感染リスクもあがるので早期治療・早期発見をすることが望ましいでしょう。