B型肝炎とは、血液や体液が体内に入ることで感染する肝臓の病気です。肝臓は予備能力が高く、病気に罹患しても重症化するまで気付きにくいことから「沈黙の臓器」ともいわれています。

そんな肝臓を守るためには、B型肝炎の早期発見・治療が大切です。

本記事では、B型肝炎の感染経路や症状、予防法を詳しく解説します。B型肝炎のリスクを知り、健やかな体を守りましょう。

B型肝炎とは

B型肝炎とは、血液や体液を介してB型肝炎ウイルス(HBV)が肝臓に感染し、「肝炎」という炎症を起こす病気です。

B型肝炎ウイルスは全世界に分布しており、全世界で約3億5,000万人が感染しているといわれています。ヨーロッパや北米では人口の2%以下、アフリカや東南アジアでは人口の8%以上が感染しているとされており、地域によって感染者数に大きな差があるのが特徴です。

では、日本においてはどうでしょうか。日本では、約130~150万人が感染していると推定されています。およそ100人に1人が感染している計算です。現在では、年間約10,000人の新規感染者がいるといわれています。

B型肝炎の感染経路

B型肝炎への感染は、B型肝炎ウイルス(HBV)の含まれる血液や体液が体内に入ることによって起こります。具体的には、出産時に母体から生まれた子供に感染が起きる「垂直感染」と、垂直感染以外の「水平感染」の大きく2つに分類されます。

水平感染の代表的な感染経路が、性行為です。HBVに感染したパートナーとの性交渉によって、B型肝炎に感染します。パートナー自身が感染を知っていない場合も多く、知らず知らずのうちに感染を広げているケースもあります。

性行為以外に挙げられる感染経路は、以下のとおりです。

・HBVに感染している人と注射針・注射器を共用した場合
・HBVに感染している人から輸血・臓器移植を受けた場合
・HBVに感染している人の血液が付着したカミソリや歯ブラシを共有した場合

一方、以下の場合は感染経路とはなりません。

・HBVに感染している人と抱き合った場合
・HBVに感染している人と軽くキスをした場合
・HBVに感染している人と食器を共有した場合
・HBVに感染している人と一緒に入浴した場合

つまり、日常生活でB型肝炎に感染する可能性は、ごくわずかということです。

B型肝炎の症状

B型肝炎の症状は、急性肝炎か慢性肝炎かによって症状が異なります。急性B型肝炎とは、成人後に初めてB型肝炎ウイルス(HBV)に感染して発病したものです。性行為などの水平感染によって感染したB型肝炎が該当します。

一方、慢性肝炎は出生時や乳幼児期にHBVに感染し、持続感染へと移行した人(HBVキャリア)が発病したものです。出産によって感染する垂直感染や、乳幼児期の予防接種による集団感染がこれに当たります。

上記を踏まえたうえで、それぞれの症状を詳しく見ていきましょう。

急性B型肝炎の症状

感染後は1~6カ月の潜伏期間があり、潜伏期間を経て全身の倦怠感・悪心・嘔吐・黄疸などがあらわれます。また、初期症状として、尿の色が褐色になるケースもあります。

このような症状があらわれることを「顕性感染」と呼ぶ一方で、症状が出現しないまま治ってしまう「不顕性感染」という例もあります。

程度が軽い、いわゆる軽症であればよいのですが、激しい肝炎を起こすと命にかかわる場合もあるため、B型肝炎はあなどれない病気です。

慢性B型肝炎の症状

生後数年~数十年間は肝炎は起きず、B型肝炎ウイルス(HBV)と体内で共存することになります。

この状態を「無症状性キャリア」と呼びます。症状があらわれ始めるのは、免疫力が発達する思春期以降(10~30歳代)が大半です。HBVを病原体として認識できるようになると、白血球が体内からHBVを排出しようと活動を始め、肝炎が起こり始めます。

一過性の肝炎が起きた後は、肝機能が安定する人が8~9割とされていますが、1~2割の人は肝炎が持続するとされています。この状態が「慢性肝炎」です。慢性肝炎は肝炎が続いている状態のため、徐々に肝細胞が線維化し、肝硬変や肝がん(肝細胞癌)のリスクが高まります。

無症状性キャリアは症状こそ出ていませんが、慢性肝炎が潜んでいる黄色信号状態です。治療が必要な場合もあるため、定期的な検査を受けて健康管理を意識することが重要です。

B型肝炎の検査および診断

B型肝炎に感染しているかどうかは、血液を採取して検査します。血液検査では、まず「HBs抗原」の検査をします。HBs抗原検査で陽性の場合は、B型肝炎に感染しているといって間違いありません。逆に、HBs抗原が陰性の場合は、特殊な例を除き、感染していないといえます。

HBs抗原が陽性だった際は、医療機関で現在の感染状態を調べるために、以下のような詳しい検査をおこないます。

検査項目検査結果
HBc抗体陽性であればHBVに感染したことを示す(HBVワクチン接種の場合は陽性にはならない)
HBc-IgM抗体最近HBVに感染したことを示す
HBe抗原陽性であれば一般にHBVの増殖力が強いことを示す
HBe抗体陽性であれば一般にHBVの増殖力が低下していることを示す

参照:B型肝炎ウイルス検査について|国立国際医療研究センター 肝炎情報センター

B型肝炎の治療

B型肝炎の治療法には、大きく「抗ウイルス療法」と「肝庇護療法」の2つの方法があります。

抗ウイルス療法とは、B型肝炎ウイルス(HBV)を肝臓から追い出すことを目指す治療法です。代表的なものに、インターフェロン療法、インターフェロンと副腎皮質ステロイドホルモンの併用療法、ラミブジン内服などが挙げられます。

肝庇護療法とは、肝炎を抑えることを目的とした治療法です。ウルソデオキシコール酸の内服や、グリチルリチン製剤の注射といった治療が挙げられます。B型肝炎を直接治療する効果はありませんが、肝炎を沈静化させて肝臓の繊維化の進行を抑える効果が期待できます。

なお、急性B型肝炎の場合は、一般的に急性期の対症療法で完治する人がほとんどです。しかし、なかには急激に症状が進行する場合もあるため油断はできません。いずれにしても、専門医とよく相談のうえ治療方針を決めることが大切です。

B型肝炎のリスクや予防法

B型肝炎の予防は、血液や体液に触れないようにするのが基本です。具体的には、以下のことに注意しましょう。

  • 不特定の人と性行為をしない
  • 性感染症予防と同様にコンドームを使用する
  • カミソリや歯ブラシは共有しない
  • 他人の血液に触るときは手袋をつける
  • 不衛生な場所での皮膚穿孔(ピアス、入れ墨、針)は避ける

海外へ行く機会の多い方や、他人の血液に触れる機会の多い医療関係者は、B型肝炎ワクチンを接種するのも有効です。また、体調に不安がある方や、違和感を感じた方は、なるべく早く検査をおこなうことも大切です。

B型肝炎のリスクや予防法

肝臓は体内に侵入したウイルスや細菌による感染を防いだり、栄養分の生成・代謝を促したりする役割があります。私たちが健康に生きていくうえで、健康な肝臓は欠かせません。

ところが、肝臓は予備能力が高いがゆえに、慢性肝炎や肝硬変になっても自覚症状が出ないケースが多く見られます。しかし、劇症化する可能性はゼロではありません。少しでも体調に不安がある方は、速やかに医療機関を受診することが大切です。

B型肝炎は、正しい知識を身につければ怖い病気ではありません。B型肝炎の感染経路とリスクを知り、大切な体を守りましょう。