性病は「性行為によって感染する」と思われていますが、オーラルセックスやキスなども感染経路になり得ます。
喉に感染した性病は自覚症状がない場合が多く、治療されることなく見過ごされがちです。しかし、もし無症状でも、菌を保有している限りは感染を広げてしまう危険があります。
性病の感染を拡大させないためには、早期発見・早期治療が大切です。喉にうつる可能性のある性感染症や症状を知り、自分とパートナーを守りましょう。
性病は喉(のど)にも感染
「性病」という名称から、性器に症状があらわれるものと思っている方は少なくありません。しかし、特定の性病は喉にも感染します。
喉(のど)に感染する主な性病
・クラミジア
・淋病
・梅毒
・ヘルペス
・マイコプラズマ
・ウレアプラズマ
クラミジアや淋病に感染している人のうち、1~3割の人が咽頭からも菌が検出されるといわれています。上記の性病が確認されたときは、咽頭の検査も同時におこなうことをおすすめします。
喉(のど)の性病の主な症状
喉に性病が感染したときは、主に以下のような症状が出現します。
- 喉の不快感・痛み
- 喉・扁桃腺の腫れ
- 唇や咽頭にできるしこりや水泡
- 咳
- 発熱
- 痰
上記からわかるように、喉の性病の症状は、風邪の症状と非常によく似ています。そのため「風邪だと思っていたら実は性病だった」という例も少なくありません。
また、そもそも無症状だったり、症状の治癒と発症が断続的だったりすることから、喉の性病は気付きにくいという厄介な特徴があります。
主な喉(のど)の性病種類
喉に感染する性病には、以下のようなものが挙げられます。
・クラミジア
・淋病
・梅毒
・ヘルペス
・マイコプラズマ
・ウレアプラズマ
それぞれの症状や特徴を、詳しく解説します。
喉(のど)の性病①クラミジア
クラミジアは、日本でもっとも感染者が多いといわれている性感染症です。喉に感染したクラミジアは「咽頭クラミジア」と呼ばれています。
<感染経路>
オーラルセックスやキスにより「クラミジア・トラコマティス」が咽頭に感染して発症します。近年では、性器への感染はなく、咽頭にのみ感染している症例も増えています。
<潜伏期間>
1~3週間
<症状>
喉の痛みや腫れのほか、咳や発熱といった風邪とよく似た症状が出現します。喉の見た目には変化があらわれにくいため、感染に気付きにくく、病態を悪化させてしまったり他人にうつしてしまったりするケースが多くなっています。
喉(のど)の性病②淋病
淋病は、クラミジアに次いで感染者が多いといわれている性感染症です。喉に感染した淋病は「咽頭淋病」と呼ばれています。
<感染経路>
オーラルセックスやキスにより「淋菌」が咽頭に感染して発症します。
<潜伏期間>
2~7日間
<症状>
クラミジア同様、喉の痛み、腫れ、咳、発熱などの症状があらわれます。感染に気付きにくく、無症状の場合も多くあります。クラミジアに比べると、潜伏期間が短い点が特徴です。
喉(のど)の性病③梅毒
梅毒は昔からある性病の一つです。1967年以降、感染者は減少していましたが、2011年以降報告数は増加傾向にあり、2021年以降急激に感染が拡大しています。
<感染経路>
オーラルセックスやキスにより「梅毒トレポネーマ」が咽頭に感染して発症します。
<潜伏期間>
3~6週間
<症状>
梅毒は第1期・第2期・第3期・第4期の段階ごとに症状が変化するのが特徴です。第1期では、口腔内に小さなしこりや潰瘍ができたり、リンパ節が腫れたりします。これらの症状は3~12週間で一旦消失しますが、治癒したわけではありません。
感染から約3ヵ月が経過すると、第2期に突入します。第2期では、口腔内に炎症が生じ、乳白色や赤色に腫れたり、腫れ・赤み・ふやけるなどの症状があらわれたりします。
第4期まで進行すると、症状は重症化し、命に影響が及ぶ危険性もあります。しかし、現在の医療では、第3期、第4期まで進行することはほとんどないといわれています。
喉(のど)の性病④ヘルペス
ヘルペスには1型と2型があり、1型が口唇ヘルペス、2型が性器ヘルペスとなることが多いといわれています。しかし、現在では1型が性器に、2型が喉に感染を起こすことも多くなっており、両者の境はなくなりつつあります。
<感染経路>
オーラルセックスやキスにより「単純ヘルペスウイルス(HSV)」が咽頭に感染して発症します。
<潜伏期間>
2~7日間
<症状>
ピリピリとした違和感を感じた後に、強い痛みを伴う水泡ができます。リンパ節の腫れや高熱があらわれる場合もあります。
ヘルペスウイルスは、一度感染すると完治することはありません。体内に住み続け、免疫力が低下するたびに再発するという特徴があります。
喉(のど)の性病⑤マイコプラズマ・ウレアプラズ
マイコプラズマ・ウレアプラズマは、2012年から日本で検査が可能になった性感染症です。あまり知られていませんが、尿道炎(膣炎)の原因のおよそ4割が淋病、3割がクラミジア、残りの3割がマイコプラズマ・ウレアプラズマといわれているほど高い確率で感染が認められています。
<感染経路>
オーラルセックスやキスにより「マイコプラズマ ジェニタリウム」や「ウレアプラズマ パルバム」などが咽頭に感染して発症します。
<潜伏期間>
1~5週間
<症状>
喉の痛みや違和感、咳などの風邪に似た症状があらわれます。クラミジアや淋病と症状が似ているため、症状から判別することはできません。治療のためにも、検査で正確に判別する必要があります。
喉(のど)に症状があらわれる性病:HIV/エイズ
HIVは、後にエイズとなる感染症です。エイズはすぐに発症するわけではなく、急性期 → 無症候性キャリア期 → エイズ期と進行します。喉の症状は、初期の「急性期」の症状としてあらわれます。
<感染経路>
セックス、オーラルセックス、輸血など、分泌液や血液を介して感染します。しかし、HIVウイルスが喉に感染することはありません。喉の症状は、HIVウイルスの感染による初期症状(急性期の症状)です。
<潜伏期間>
2~6週間
※急性期
<症状>
喉の痛みやリンパ節の腫れ、発熱、倦怠感など風邪に似た症状があらわれます。全身症状として、発疹や炎症が起きる場合もあります。これらの症状は10週間ほど続き、多くの場合自然消失するのが特徴です。
しかし、およそ10年の無症候性キャリア期を経てエイズ期へと突入します。エイズ期に入ると免疫不全状態になり、さまざまな病気にかかるリスクが跳ね上がります。
喉(のど)に性病がうつる際の感染経路
性病が喉に感染する主な原因は、オーラルセックスやキスです。一方で、以下の場合は感染のリスクは極めて低いとされています。
- 間接キス
- 食器の共有
- 飛沫感染
上記のように、喉にうつる性病の感染経路は、性行為の延長で発症する可能性が極めて高いといえます。そのため、過度に心配する必要はありません。
ただし、喉に感染する性病は、無症状だったり症状が軽度だったりと、感染の有無がわかりにくい点に注意が必要です。
オーラルセックスでもコンドームをつける、不特定多数の相手とキスをしないといった基本的な対策を忘れないようにしましょう。
喉(のど)の性病のまとめ
性病は性器に感染するものと思われがちですが、オーラルセックスやキスによって喉にも感染する場合があります。喉に感染した性病は症状がわかりづらいため、治療をせずに放置されがちです。
しかし、なかには放置すると重症化してしまう病気もあるため、早期発見・早期治療に取り組むことが求められます。喉の痛みや不快感が続いていたり、複数の性パートナーがいたりして感染が心配な方は、一度きちんと検査を受けてみることをおすすめします。