感染した部位に強い痒みや痛みを生じるカンジダ症。広く知られる種類として性器カンジダがあることから、性行為で感染するイメージが強いという方も多いでしょう。

しかし、カンジダの主な感染経路は性行為ではありません。この記事では、性行為以外にカンジダを引き起こす原因やその感染経路について解説します。

カンジダの主な感染経路

カンジダは真菌(カビの一種)によって起こる感染症です。カンジダ菌は、口腔内や消化管、膣などの粘膜や皮膚に常に生息し、健康な人も保有する菌です。健康なときには人体に影響を及ぼしませんが、いくつかの条件下において異常に増殖し、感染します。

カンジダの感染経路は、発症する部位によって異なります。性行為による感染もありますが、主な感染経路は自己感染です。それでは、カンジダの自己感染についてくわしく解説していきます。

カンジダの自己感染

カンジダ感染のなかで、最も多い感染経路である自己感染。体調がすぐれないときや抗生物質を内服したときなど、免疫力が低下した際に皮膚や粘膜で異常増殖するためといわれています。

カンジダの種類において広く知られる性器カンジダに関しても、免疫力が低下する数々の原因により自己感染することが原因の一つです。とくに、女性の場合は月経があるため、月経前後のホルモンバランスの乱れや高温多湿な状態が続き、自己感染を引き起こしやすいといわれます。

症状は感染した部位によってさまざまです。症状のなかでも多くみられるものに、強い痒みや痛み、膣カンジダの場合はおりものの増加などがあります。また、陰茎カンジダ症に関しては、感染しても症状が出にくいこともあります。陰茎カンジダにより陰嚢や亀頭に発疹が生じた場合、赤く腫れ痛みを伴う場合があります。

いずれの症状も炎症による症状が強く、第一の治療としては患部の清潔と安静です。また、多くの場合は抗真菌薬の膣剤や軟膏を使用し治療します。一般的な治療期間には、おおよそ1週間ほどかかるといわれています。

カンジダの原因として可能性がかなり低い感染経路

一方で、カンジダを発症する原因として考えにくい感染経路は入浴やプールです。カンジダを発症していても、水中を通して他者に感染させてしまうリスクは、限りなく低いと考えられています。

しかし、水中での感染リスクが低いからといって、入浴施設やプールに出かけるのは控えましょう。カンジダの発症には免疫力の低下が関わっているため、そのようなタイミングで公衆浴場などを利用すると、ほかの感染症に罹患するリスクがあります。

カンジダの感染原因となる行為

カンジダの感染原因には、

  • ホルモンバランスの変化
  • 免疫力の低下
  • 常在菌バランスの崩れ
  • 高温多湿など、環境の変化
  • 性行為

などがあります。

性行為により感染するイメージをお持ちの方もいるかもしれませんが、性行為とは関係なく感染する可能性があるのがカンジダの特徴の一つです。

それでは、上記の原因をくわしく見てみましょう。

ホルモンバランスの変化

月経によるホルモンバランスの変化や疲労・ストレスなどにより、常在細菌叢のバランスが崩れることがあります。すると、常在菌であるカンジダ菌は、皮膚や粘膜で異常増殖し感染してしまいます。

なかでも、女性の場合はエストロゲンという女性ホルモンが分泌されており、エストロゲンが膣内pHを低下させることで、常在細菌叢のバランスを乱すことがわかっています。

免疫力の低下

風邪を引いたり、糖尿病・HIV感染など免疫力の低下に関わったりする病気によるものが影響することがあります。

免疫力が低下すると、常在細菌叢のバランスが乱れます。本来であれば健康な人に影響を及ぼさない菌であっても、疲れやストレスなどによる免疫力の低下により、カンジダを発症される方もいます。

常在菌バランスの崩れ

刺激性の石鹸で陰部を洗いすぎたり抗生物質を内服したりすると、人体に有益な常在菌までも殺してしまいます。また、抗生物質は薬の特性上、カンジダ菌をはじめとした真菌には効果がありません。

そのため、常在菌バランスが崩れ、カンジダ菌が異常増殖した結果、カンジダを発症します。

高温多湿などの環境の変化

夏場や運動での発汗による蒸れ、またジーンズなどの通気性の悪い条件下では、カンジダ菌が繁殖しやすくなり感染リスクを高めることにつながります。

また、紙ナプキンやオムツ、合成繊維のきつく密着した下着などは、高温多湿の環境を作りやすいため、使用の際には陰部の清潔を心がけることが大切です。

性行為

性行為によるカンジダ感染は少ないといわれていますが、カンジダ発症中に性交渉することにより、およそ5〜10%の確率で感染することがあるといわれています。

カンジダは発症場所によっていくつもの種類がありますが、なかでも性器カンジダ症を患っている場合に性交渉することで感染しやすいとされています。症状の強い急性期の間の性交渉は避けることが必要です。

カンジダ感染経路のまとめ

カンジダは、性行為以外にもさまざまな感染原因や感染経路があることがおわかりいただけたのではないでしょうか。

カンジダ菌は誰しもが保有する常在菌のため、感染原因について正しく知ることが感染予防につながります。

また、カンジダは再発を繰り返しやすい感染症の一つです。違和感や自覚症状が出現した際には、医師による診察を受けるようにしてください。

▼参考
産婦人科 診療ガイドライン ―婦人科外来編2020
日本性感染症会誌Vol.19 Suppl.2008/ガイドライン2008性器カンジダ症
MSDマニュアル|カンジダ症