トリコモナスは「膣トリコモナス原虫」によって感染する病気です。性感染症の一つですが、感染経路は性行為だけでなく、日常生活にも潜んでいます。

本記事では、トリコモナスに感染する原因と考えられる感染経路について詳しく解説します。正しい知識を知り、自分や家族、大切なパートナーを守りましょう。

トリコモナスの主な感染経路

トリコモナスとは、「膣トリコモナス原虫」と呼ばれる原虫が性器に入り込むことで感染する性感染症です。膣トリコモナス原虫はごく小さな微生物のため、肉眼では確認できません。

目には見えませんが、下着やタオル、便座、浴槽などに寄生していることがあり、性感染症以外でも感染してしまうリスクのある厄介な感染症です。

具体的にどのような感染経路があるのか、詳しく見ていきましょう。

トリコモナス感染経路①性器→性器

トリコモナスの主な感染経路は性行為です。なかでも、性器から性器への感染が最も多いとされています。

男性が感染している場合は、精のうや前立腺に寄生している膣トリコモナス原虫が精液を通して相手に感染します。一方、女性が感染している場合は、膣や子宮の入り口(子宮頸管)に寄生している膣トリコモナス原虫が、膣分泌液を介して感染します。

<男性が感染した場合>

男性がトリコモナスに感染すると、以下のような症状が現れる場合があります。

  • 軽い排尿痛
  • 尿道のかゆみ
  • 尿道の違和感・不快感
  • 尿道からの分泌物(膿)

一般的に、男性は無症状の場合が多いといわれています。しかし、症状がなければ大丈夫というわけではありません。トリコモナスは自然治癒はしないため、放置しておくと症状は悪化します。早期発見と適切な治療が大切です。

<女性器に感染した場合>

女性がトリコモナスに感染すると、以下のような症状が現れる場合があります。

  • 異臭の強いおりものの増加
  • 膣や周辺のかゆみ
  • 膣や周辺のただれ・痛み
  • 下腹部の痛み

比較的女性の方が症状が現れやすい傾向にありますが、それでも感染者の20~50%程度は感染に気付かないといわれています。しかし、放置すると炎症が卵管にまでおよび、不妊や早産を引き起こす可能性がある怖い病気です。

男性同様、早期発見と適切な治療が求められます。

トリコモナス感染経路②性器⇄口腔

オーラルセックスによってトリコモナスに感染することもあります。ただ、性行為に比べると感染のリスクは低いといってよいでしょう。

口腔内感染が起こると、特有の口臭を引き起こすとされています。感染に気付いていないと知らず知らずのうちに感染を拡大させてしまうため、心当たりのある場合は早めに検査をおこないましょう。

トリコモナス感染経路③口腔→口腔

キスにより感染部位と粘膜の接触が起こると、トリコモナスに感染する可能性があります。

口腔内感染の場合、進行した歯周ポケットなどに感染が見られるケースが多いのですが、2002年には上顎に感染したという症例も報告されています。この症例では、上顎結節部にかけて骨吸収がみられ、また一部には骨破壊も認められたとの報告があります(参照:上 顎に発生した口腔トリコモナス症の1例)。

キスによる感染はリスクこそ低いものですが、気になる症状がある場合は迅速に専門医に相談することが大切です。

トリコモナス感染経路④男性器→肛門

膣トリコモナス原虫は肛門や直腸にも生息します。そのため、男性器から肛門へ感染する可能性があります。男性同士の性行為でも十分に感染するリスクがあるので注意が必要です。

トリコモナス感染経路⑤物・水中→性器

トリコモナスのもっとも厄介なところが、タオルやシーツ、下着、トイレの便座などの物を介して感染したり、お風呂やプールの水を介して感染したりしてしまう点です。つまりは、幼児や性行為の経験がない人でも感染するリスクがあるということです。

膣トリコモナス原虫は乾燥には極めて弱いのですが、水中では非常に活発だといわれています。また、一定の温度や湿度のある環境を好むため、風呂場のタオルやイスなどは特に注意したい感染経路です。

トリコモナスの原因として可能性がかなり低い感染経路

トリコモナスは、以下の感染経路は感染の原因とならないといわれています。

  • 輸血
  • 傷口の接触
  • 握手
  • ハグ

トリコモナスは感染が粘膜で留まるため、血液に入り込むことはありません。そのため、輸血や傷口からの感染リスクはないとされています。握手やハグも感染経路にはなりませんが、膣トリコモナス原虫が寄生した分泌物が手についた状態で性器に触れてしまうと感染する可能性があります。

トリコモナスは下着やタオル、シーツなどからも感染するリスクのある性感染症です。上記の例でも必ずしも安全とは言い切れないため、感染している(またはリスクのある)パートナーがいる場合は、早期の検査および治療をおこなうことが大切です。

トリコモナスの感染原因となる行為

トリコモナスの感染原因となる行為をまとめましょう。

<トリコモナスの感染原因となる行為>

膣性交オーラルセックスキスアナルセックス感染者とタオルや便座などを共有する感染者と同じ浴槽に入る

また、トリコモナスは、母子感染を起こすことでも知られています。また、早産や前期破水を起こすリスクもあります。妊娠中に感染していると判明したら、早めに治療をおこなうことが大切です。

注意したいのは、性行為だけでなく普段の生活でも感染してしまう可能性がある点です。温泉やプールなどの共用施設では自分専用のタオルを用意する、家庭内では感染者と同じ浴槽に入らないようにするなどの注意が必要でしょう。

トリコモナスの感染経路のまとめ

性感染症というと、クラミジアや淋病、梅毒などが有名ですが、トリコモナスの感染者はクラミジアをも超えるとの報告もあります(参照:厚生労働省|性行為感染症について〈ファクトシート〉)。

トリコモナスは自覚症状がない場合が多く、知らず知らずのうちに感染を拡大している可能性も高い感染症です。自分と大切な人を守るためにも、以下の点に注意しましょう。

  • コンドームは正しく使用する
  • 不特定多数の相手との性行為はできるだけ避ける
  • 生理中や妊娠中は感染しやすいため、期間中の接触は控える
  • 自分専用のタオルを用意したり、衛生的な公共施設を利用したりする

また、気になる症状があったら早めに検査を受けることも非常に大切です。感染が認められたときは、ピンポン感染を防ぐためにもパートナーと一緒に治療をおこないましょう。