ケジラミ症は性感染症の一つで、シラミの一種であるケジラミが陰毛などの体毛に寄生することで感染するものです。今回の記事では、ケジラミ症の特徴や症状を正しく理解し、早期発見・治療につなげる方法についてご紹介します。

ケジラミ症について

ケジラミ症はケジラミというシラミの一種で、主に陰毛に寄生する吸血性昆虫です。メス・オスともに、大きさはおおよそ1.0mm前後で、白〜茶色の丸い体をしています。陰毛の根本付近に産卵し、産み付けたあとは固い分泌物で固められます。こうして産み付けられた卵は、約1週間ほどでかえり成虫になります。成虫になると、同様の過程で約30〜40個の卵を産卵し、これまで約1ヶ月のサイクルで死にます。

ケジラミ症は、ほかのシラミ類と同様に減少傾向でしたが、1990年代中頃より徐々に感染者数が増加している背景があります。

ケジラミ症の主な症状

ケジラミ症の主な症状は、感染部位における激しいかゆみです。なかには、痒みを感じなかったり感じてもわずかだったりする方もいますが、おおよそ強烈なかゆみを訴えるのが大きな特徴です。

また、かゆみを訴えていても、湿疹などの皮膚の異常所見が現れないことも特徴の一つです。しかし、かゆみが強く皮膚を掻きむしることで、傷や湿疹を生じることも少なくありません。

これらの症状は我慢していても自然に軽快もしくは治癒することはありません。放置しておくと、感染を広げてしまう可能性もあるため、適切な対処が必要です。

ケジラミ症の感染経路

ケジラミ症の感染経路は大きく分けて3つあります。

  • 性行為(陰毛同士の接触)
  • 脱衣かご
  • タオルや寝具

上記についてくわしく解説していきます。

性行為(陰毛同士の接触)

ケジラミ症の感染経路において最も多いのが、性行為による感染です。ケジラミ症に感染した陰毛をはじめとした体毛が、性行為により陰毛や体毛に直接接触することにより感染が伝播します。

ケジラミは陰毛をはじめとした体毛そのものに寄生するため、性行為時にコンドームを着用しても感染予防にはならないという特徴があります。

脱衣かご

ケジラミは、陰毛をはじめとした体毛に卵を産み付ける際、セメントのような固い分泌物で固定するため、卵が移動することは容易ではないとされています。しかし、ケジラミは寄生元(人間)から離れても約48時間は生存します。

何らかの拍子で卵が下着などの衣類に付着した場合、脱衣かごなどの物品を介して感染が拡大するケースもあるのです。

タオルや寝具

上記同様に、タオルや寝具類に付着した卵は、人間から離れても約48時間生存し続けます。その間に家族やパートナーの体毛に付着すると、容易に感染してしまいます。感染に心当たりのある場合は、速やかに処置を受けるなどして対処することが大切です。

いずれの感染経路においても、ケジラミ症は体毛のあるところに簡単に感染するという特徴を持っています。気になる症状がある場合は、感染を広げないためにも、医療機関へ受診するようにしましょう。

ケジラミ症の検査法

ケジラミ症の検査方法についてご紹介します。

ケジラミ症の検査方法は、鏡検法というものが用いられます。鏡検法とは、拡大鏡を使用し陰毛基部(根本部分)に所見がないか観察するものです。具体的には、陰毛に褐色〜白色の付着物をピンセットでつまみ、脚が動くものがないか確認します。こうしたものがあれば、ケジラミとして検体を採取します。採取後、対象物をスライドグラスに置き、鏡検しケジラミの虫体を確認するといった流れで検査が行われます。また、陰毛を観察する際に、産み付けられた卵が確認された場合も、確定診断となります。

上記のほかにも、ケジラミの血糞が付着した下着なども参考材料となるため、気になる物があれば持参すると良いでしょう。

ケジラミ症の検査は、病院をはじめとした医療機関で受けることが可能です。診療科は、皮膚科や性病科のほか、泌尿器科や婦人科などで診察できますが、病院によって科目が異なるため、受診の際はあらかじめ相談することがおすすめです。

ケジラミ症の治療法

ケジラミ症の治療法について解説していきます。ケジラミ症の治療方法には、大きく分けて2つの方法があります。

陰毛(寄生部位)の毛を剃る

ケジラミは陰毛をはじめとした体毛に寄生するため、寄生している、もしくは寄生が疑われるすべての部位の体毛を剃毛することが有効な治療法です。しかし、陰毛以外の毛髪やまつ毛などの体毛に寄生している場合、すべてを剃毛することは現実的ではないでしょう。そのような場合は、つぎに紹介する治療方法を参考にしてください。

薬剤による治療

毛髪やまつ毛など、剃毛が困難な場合には、薬剤を使用することがおすすめの治療法です。現在国内で認可されている治療薬は以下の2つです。

0.4%フェノトリンパウダー(スミスリンパウダー)

0.4%フェノトリンシャンプー(スミスリンL)

上記の2剤のみですが、いずれも一般に市販されている薬剤ですので、気軽に手に入りやすいでしょう。

ケジラミ症の状況にあわせた治療を行い、ケジラミとケジラミの卵が完全に駆除され、かゆみなどの症状が改善されたことが確認できれば治癒したと考えます。しかし、治療において念頭に置きたいのは、ケジラミ症は家族やパートナー間で相互感染を繰り返しやすいという点です。感染に心当たりのある場合は、診断結果に応じて家族やパートナーも一緒に治療を受けることが大切です。

ケジラミ症の予防法

ケジラミ症の予防法で最も大切なのは、性的接触から予防することです。ケジラミ症に感染している、もしくはパートナーが感染している場合、治癒が確認されるまでは性行為をしないようにしましょう。コンドームの着用はケジラミ症の感染予防には有効ではありません。寄生した体毛が直接接触することで感染することを念頭に置くことが大切です。

このほか、感染している人が使用したタオルや衣類などを介し、感染が伝播する可能性もあります。治療を受け治癒が確認されるまでは、物品の共有は控え、アイロンなどで熱処理を行い駆除し清潔保持を心がけるようにしましょう。