C型肝炎は、慢性肝炎のリスクが最も高いとされている肝炎です。一方で、自覚症状がないケースが多いため、多くの方は「自分は大丈夫」と思ってしまいがちです。しかし、何十年という時間をかけて、少しずつ肝臓に黒い影を落としているかもしれません。
本記事では、C型肝炎について解説します。感染経路や症状、予防法も詳しく紹介していますので、リスクを感じている方はぜひ参考にしてみてください。
C型肝炎とは
C型肝炎とは、C型肝炎ウイルス(HCV)に感染して発症する肝臓病です。
HCVは世界中に広く分布しており、世界の感染者は約1.7億人にのぼると推定されています。アフリカやエジプト、アジアの一部地域では15%以上という高い罹患率をだしている地域もあるほどです。
日本においては、約150~200万人の感染者がいると推定されています。慢性肝炎のうち、約7割がC型肝炎患者とされていることから「21世紀の国民病」とも呼ばれています。
C型肝炎の感染経路
C型肝炎ウイルス(HCV)は、主にHCV陽性者の血液を介して感染します。ひと昔前までは、輸血による感染が最も多いとされていました。しかし、現在では献血された血液はすべてC型肝炎ウイルスの検査が徹底しておこなわれるようになっており、輸血による感染のリスクはほとんどなくなっています。
現在指摘されている具体的な感染経路は、以下のとおりです。
HCV陽性者が使用した器具を、適切な消毒などをおこなわずに使いまわした場合(入れ墨やピアスの穴あけ、鍼)
HCV陽性者の血液が傷口から侵入した場合
HCV陽性者と注射針・注射器を共有した場合
HCV陽性者の血が付着したカミソリや歯ブラシを共用した場合
ほかにも、HCV陽性者との性行為や母子感染といった感染経路も稀ですが見つかっています。
一方で、以下のような場合には感染リスクはありません。
HCV陽性者と握手した場合
HCV陽性者と軽いキスをした場合
HCV陽性者と食器を共用した場合
HCV陽性者と一緒に入浴した場合
つまり、日常的な生活の場でHCVに感染するケースはほとんどないということです。
C型肝炎の症状
C型肝炎ウイルス(HCV)に感染すると、2~14週間の潜伏期間を経て急性肝炎を起こす場合があります。急性肝炎の症状は、以下のとおりです。
全身倦怠感
食欲不振
発熱
嘔吐
悪心
腹痛
色の濃い尿
黄疸
ただし、C型肝炎に感染した方の多くは、自覚症状がない不顕性感染です。「症状がないのであれば問題ない」と思ってはいけません。C型肝炎感染者の約7割が「慢性肝炎」になるとされており、さらに1~2割の人は肝硬変や肝がんに進行するといわれています。
C型肝炎の治療法や予防法が確立されつつある現在でも、肝がんの原因のおよそ50%がC型肝炎とまでいわれているのが現状です(参照:一般社団法人 日本肝臓学会|肝がん白書 令和4年度)。
自覚症状がなくても、慢性肝炎が進行しているケースもあります。定期的な検査や必要に応じた治療を講じ、適切な健康管理をおこなうことが重要です。
C型肝炎の検査および診断
C型肝炎ウイルス(HCV)に感染しているかどうかを判断するために用いられているのが、血液検査です。血液検査では、最初に「HCV抗体検査」をおこないます。抗体検査が陰性であれば、HCVの感染はありません。
抗体検査が陽性の場合は、「現在ウイルスに感染している人(HCVキャリア)」か「過去にHCVに感染していたが現在は治癒している人(感染既往者)」かを判断するために「HCV核酸増幅検査(HCV-RNA定量検査)」という精密検査をおこないます。この検査が陽性の場合は、HCVに感染しているHCVキャリアであることを意味します。
HCVキャリアであると診断されたときは、C型肝炎ウイルスの型を調べる検査などを組み合わせて、治療方法の選択や治療効果の予測をします。肝臓の状態や肝がんの合併を知るために、腹部エコー検査やCT、MRIなどの画像検査をおこなう場合もあります。
C型肝炎の治療
C型肝炎の治療には、大きく2つの方法があります。
抗ウイルス療法
肝庇護療法
どちらの治療法を選択するかは、慢性肝炎の進行状況に加え、インターフェロン療法が可能かどうか、これまでの抗ウイルス療法の効果はどうだったかといったあらゆる要素を加味して判断します。
■抗ウイルス療法
まず検討されるのが、抗ウイルス療法です。抗ウイルス療法では、インターフェロン療法(注射)や、インターフェロン療法とリバビリン(内服薬)の併用による治療が主に用いられます。ただし、インターフェロンは発熱、倦怠感、頭痛、脱毛、白血球・血小板減少、さらには抑うつ、自殺企図などの副作用が懸念されているため、治療可能かどうかを慎重に判断しなければなりません。
現在では、インターフェロンを使わず「ソホスブビル・レジパスビル配合錠(ハーボニー)」や「グレカプレビル・ピブレンタスビル配合錠(マヴィレット)」などの内服薬のみで治療する「インターフェロンフリー」の治療法も注目されています。副作用を抑えて、安全性の高い治療をおこないたいと考えている方にとっては、有力な選択肢となるかもしれません。
■肝庇護療法
抗ウイルス療法の効果が得られなかったり、肝発がんのリスクが高かったりする場合に用いられるのが「肝庇護療法」です。グリチルリチン配合剤(強力ネオミノファーゲンC)といった注射や、ルソデオキシコール酸(ウルソ)や小柴胡湯といった内服薬を服用することにより、肝機能の働きを正常に保ち、肝炎の進行を抑制します。
C型肝炎のリスクや予防法
C型肝炎ウイルス(HCV)の感染を予防するためのワクチンや免疫グロブリンは、残念ながらまだ開発されていません。C型肝炎の最も効果的な予防法は、感染経路を正しく知ることといえます。正しい知識を身につけ、他人の血液や体液に触れない、他人に触れさせないように意識しましょう。
また、家族であっても、キャリアの人が適切な処理をおこなうことで家庭内感染を防止できます。具体的には、以下のような行為に注意してみてください。
血液や分泌物の付着したものはしっかり包んで捨てる
血液や分泌物の付着したものは流水でよく洗い流す
歯ブラシやカミソリ、タオルなどの日用品は専用にする
乳幼児に口移しで食べ物を与えない
月経中は浴槽に入ることを避ける
また、早期発見も非常に重要です。以下に該当する方は、C型肝炎ウイルス(HCV)の検査を積極的に受けることが推奨されています。
a. 平成4年(1992年)以前に
・輸血を受けたことがある方
・大きな手術を受けたことがある方
・フィブリノゲン製剤(フィブリン糊としての使用を含む)を投与されたことがある方 ・血液凝固因子製剤を投与されたことがある方
・臓器移植を受けたことがある方
b. 長期に血液透析を受けている方
c. 薬物濫用者、入れ墨(タトゥー)をしている方
d. ボディピアスを施している方
e. その他(過去に健康診断等で肝機能検査の異常を指摘されているにもかかわらず、その後、肝炎の検査を受けていない方等)
引用:ウイルス肝炎研究財団|C型肝炎について
上記に該当する方はもちろん、まだ検査を受けたことのない方も、まずはしっかり検査を受けてみてください。また、その後の定期的な検査も大切です。
C型肝炎についてのまとめ
C型肝炎は自覚症状がないため、検査に踏み切れない方も多いかもしれません。しかし、C型肝炎ウイルス(HCV)は長い年月をかけて、肝臓をじわじわとむしばみます。手遅れにならないためにも、早期発見が大切なのです。
また、C型肝炎の感染予防のために、キャリアの人が正しい予防策を講じることも重要です。自分と周りの大切な人を守るために、まずは専門医のもとで検査をおこなってみてはいかがでしょうか。