性感染症ときくと、性的な接触を行った部位に分かりやすく発疹やかゆみといった症状が出るとイメージする方も少なくないでしょう。

しかし、HIV感染の場合には、男女・感染経路によって症状に違いがみられることはありません。男女ともに、どのような感染経路で感染したとしても無症状のまま長期間経過するのがHIV感染の最大の特徴です。

そのため、エイズが発症してはじめてHIV感染に気付く、いわゆる「いきなりエイズ」の状態になりやすいのです。今回は、HIVの感染からエイズ発症までにどのような経過をたどり、どのような症状が現れるのかを解説します。

HIV・エイズの主な症状

まず、HIV(Human Immunodeficiency Virus)とは、主に性的接触により感染するウイルスのことを指します。

HIVが体内に侵入し増殖することで身体を守るための免疫機能が破壊されていきます。
そして、HIV感染によって免疫力が著しく下がった際に発症するのがエイズです。

AIDS(Acquired Immune Deficiency Syndrome)は、日本語で「後天性免疫不全症候群」を意味し、HIVによって引き起こされる様々な病気の総称を指します。

そのため、すべての方に決まった症状が現れるわけではなく、免疫不全によって発症した疾患特有の症状が現れます。エイズが発症すれば命に関わることも考えられますので、早期発見・治療を開始することが重要です。

HIV・エイズ経過ごとの症状

HIVに感染してからエイズを発症するまでの症状は3つの段階に分類されています。ここからは、それぞれの段階でどのような症状が出るのかを解説します。

HIV・エイズ経過ごとの症状①感染初期(急性期)

HIVに感染して間もない2〜4週間程の段階のことを感染初期(急性期)といいます。この段階では、ヒトの体内に侵入したHIVが徐々に増殖を始めます。しかし、自覚できるような症状はほとんどないことが多いです。

この時期に症状が出たとしても下記のように風邪やインフルエンザとよく似た症状で、数日から10日もすれば治まってしまいます。

・発熱
・のどの痛み
・リンパ節の腫脹
・倦怠感
・下痢
・頭痛
・筋肉痛
・皮疹

このような症状は全ての方に見られるわけではありませんが、感染初期の時期にこのような症状があり不安な場合には、一度検査を受けることをおすすめします。

HIV・エイズ経過ごとの症状②無症状期

感染初期を過ぎると次は無症状期へ入ります。その名の通り、症状が全く現れないということです。症状が現れない状態ですので、感染自体に気付かずに過ごす方がほとんどです。

検査をしない限りは感染しているかどうか分からないため、気付かないうちに感染を広げてしまうことも考えられます。

そして、無症状の状態でも体内ではHIVが増殖を続け、免疫細胞の破壊が進んでいきます。

HIV・エイズ経過ごとの症状③エイズ期

免疫力が著しく低下して何らかの症状が現れると、「エイズ」の発症となります。エイズ期には免疫力が下がることにより、真菌などによる日和見感染を起こしやすくなります。

その他にも、HIV感染によって引き起こされるエイズの主な疾患は多数あります。
下記は、HIVによって引き起こされるエイズ疾患の一例です。

・真菌によるカンジダ症、ニューモシスチス肺炎など
・原虫によるトキソプラズマ症など
・細菌による化膿性感染症(敗血症・肺炎・骨膜炎など)
・ウイルスによる感染症(サイトメガロウイルス・単純ヘルペスウイルスなど)
・悪性腫瘍(カポジ肉腫・非ホジキンリンパ腫など)
・HIV脳症・HIV消耗性症候群など

これらのような疾患はHIV感染により免疫力が極端に低下した後に発症します。時に命にかかわる重篤な症状を引き起こすことがあるため注意が必要です。

エイズを発症してしまえば発症前に比べ治療効果が低くなってしまうため、可能な限り早めに検査を受けるようにしましょう。

HIV・エイズの症状に当てはまった方へ

HIVの感染やエイズの発症を疑うような性的接触が思い当たる場合や症状に当てはまるような場合は、すみやかにHIV検査を受けることが大切です。

HIV抗体を調べる検査は全国の保健所で無料・匿名で受けることが可能です。また、医療機関では有料・記名で検査を受けられます。

その他、自宅でHIV検査ができる郵送キットを用いて調べることも可能です。このようなキットによる郵送検査も匿名で検査ができます。

病院に行く時間がない方や病院に行くことに不安がある方などは、是非利用を検討してみてはいかがでしょうか。繰り返しになりますが、HIV感染はエイズが発症する前に治療を開始することが重要です。

不特定多数の方と性的な接触を行っている方やパートナーが変わった方などは、定期的に検査を受けておくと安心です。

なお、HIVに感染して1〜3ヵ月の期間は、例え感染していても「陰性」となってしまうことがあります。そのため、感染が疑われる接触から1〜3ヵ月を過ぎたタイミングで検査を受けることをおすすめします。

検査のタイミングについて不明な点がある場合には、保健所や医療機関などの専門機関へ相談しましょう。

HIV・エイズ症状のまとめ

HIV・エイズは他の性感染症とは異なり、接触部位の病変などはみられない病気です。HIVに感染していても、気付かないままエイズを発症してしまうケースが多いのも現状です。

エイズの発症によってHIVの感染に気付く「いきなりエイズ」を防ぐためにも、不安な場合には早めに検査を受けるようにしましょう。