梅毒とは梅毒トレポネ−マという細菌による性感染症です。

2000年代には患者数が減っていたものの、2011年以降より徐々に梅毒患者数は増加し、2018年以降年間20例前後の発症者が報告されている病気です。

性的接触によって発症することが多く、発症者の内訳をみると、男性は20~50代、女性は20代に多い傾向にあります。

本記事では、梅毒の症状について詳しく解説していきます。梅毒症状がある場合の対処法についても解説するため、該当する症状がある方、似た症状が出ていて不安という方は参考にしてみてください。

梅毒は性行為の種類によって変わる症状

梅毒の主な特徴に性行為の種類によって症状が変わる点があります。
性行為の種類は、オーラルセックス(口腔性交)、アナルセックス(肛門性交)、セックス(膣性交)の3つです。


一般的に、アナルセックスによってすることが多いといわれており、一度の性行為で、梅毒になる確率は20%程度と言われています。

梅毒の症状が出ている部分に粘膜が触れることで症状が出現するため、例えばペニスに梅毒の症状がある方にフェラチオをした場合には自分の口腔粘膜に症状が出現します。

主な梅毒の症状

梅毒の症状は、出現するタイミングにより第Ⅰ期と第Ⅱ期に分類されます。第Ⅰ期とは、梅毒の原因となる菌に感染してから約3週間程度、第Ⅱ期とは、感染後4~10週間ほど経過したタイミングです。

それぞれの時期で出現する症状が異なりますが、第Ⅰ期では梅毒の菌と接触した局部に症状が出ることが多く、第Ⅱ期では梅毒の原因菌が血液に入って全身をめぐるため、全身に症状が出現する傾向にあります。

第Ⅰ期と第Ⅱ期は、最も感染性が高い時期といわれているため、症状が見られたらすぐに治療をすることで周囲への感染も防げます。特に第Ⅱ期の症状は3カ月~3年続き、しばらくすると自然に消失するのですが、その後しばらくは症状が出現しません。

つまり、第Ⅱ期の症状が消失したあとは梅毒の末期となる可能性があるため、症状が出現したら対処をすべきと考えられています。ここでは、主な梅毒の症状と出現時期について詳しく解説します。

梅毒の症状①しこり

第Ⅰ期に起こる症状で、性器や口の中に小豆から指先くらいの小さなしこりができます。

このしこりは、徐々に中心部が高く盛り上がってくるのですが、これを初期硬結と呼びます。痛みはほとんどありません。


感染後3週間程度で症状が出現しますが、治療をしなくても消失することが特徴です。

梅毒の症状②ただれ

しこりと同じく第Ⅰ期に起こる症状で、しこりと同じく小豆から指先くらいのただれや潰瘍ができます。こちらも痛みはありません。

硬性下疳とも呼ばれ、感染後3週間程度で出現し、治療をせずとも消失します。しこりとただれは、第Ⅰ期における梅毒の典型的な症状です。

梅毒の症状③リンパ節の腫れ

リンパ節の腫れは第Ⅰ期、第Ⅱ期どちらにも見られる症状です。

第Ⅰ期ではリンパ節の腫れが必ず現れるわけではありません。もしも、腫れる場合にはしこれりやただれが出ている部分の近くのリンパ節に見られることが多く、特に太もものリンパ節が腫れる傾向にあります。

痛みは出にくいと考えられているものの人によっては腫れているところに痛みが出たり、下腹部痛が生じたりします。第Ⅰ期に出たリンパ節の腫れは2~3週間ほどで治療をしなくても消失します。

第Ⅱ期では約50%の方にリンパ節の腫れが見られ、全身のリンパ節に症状が出現するものです。

梅毒の症状④発疹

第Ⅱ期に発症する梅毒の特徴的な症状です。体や顔、手足にピンク色の円形の湿疹ができるのですが、これがバラの花の形のように見えることからバラ疹と呼ばれています。

特に手の平や足の裏に発疹ができるケースは珍しく、手や足の裏に発疹ができたことでバラ疹と気づくことが多々あります。

発疹はすぐ消えることもありますが、何カ月にわたって続くこともあり、一度消えても再発する点が特徴です。

痛みやかゆみはほぼありません。頭に発疹ができると発疹ができた部分の髪の毛が抜け落ちます。このときに虫食いのようにまだら状に抜ける場合があり、この現象は梅毒による脱毛の特徴です。

梅毒の症状⑤扁平コンジローマ

バラ疹と同じく第Ⅱ期に出現する典型的な症状です。口、わきの下、陰部、肛門など、皮膚の湿ったところにくすんだピンク~灰色のいぼが見られ、表面がやぶれると、浸出液が染み出します。

この扁平コンジローマが人に梅毒を感染させるきっかけになる傾向が極めて高いです。特に口腔粘膜に症状が見られやすいです。

梅毒の症状⑥のどの腫れ

第Ⅱ期に見られる症状で、のどが腫れたりふやけたり、赤くなったりします。
この症状を梅毒性アンギーナといいます。

梅毒の症状⑦神経症状

梅毒の治療を全くしていない方の5%程度に起こるといわれている症状です。症状が軽い場合には軽度の髄膜炎で済みますが、脳や脊髄の動脈に炎症が起こると、慢性髄膜炎によって頭痛や項部硬直といって首の後ろが硬くなって痛みを伴う症状が出現します。

ほかにも、集中力や記憶力の低下、不眠が症状として現れ、重症のケースでは腕や足の筋力低下や麻痺が起こることもあります。

梅毒の症状⑧ゴム腫

梅毒が進行して見られる症状です。ゴムのような腫瘍が身体のいたるところにできるもので、特に皮膚、骨、粘膜にできやすいといわれています。周囲の組織を徐々に破壊していくため、強い痛みが出現することが特徴です。

治療の発展により近年ではゴム腫ができるケースは少ないといわれています。

梅毒の症状⑨心血管性の症状

梅毒の末期症状で、梅毒に感染してから数年~数十年後に症状が出現します。梅毒の原因菌が心臓の血管に感染することで、大動脈瘤や動脈炎を発症し、死に直結する可能性があります。

梅毒の症状を放置してしまうことのリスク

梅毒の症状は放置することで死に直結するリスクもあります。特に、長い期間放置をすることで心臓に症状が出るため、突然死につながる可能性もあるのです。また、命に関わらなくても麻痺がでたり、組織が破壊されたことで重い障害を残し、日常生活に影響が出たりする可能性もあります。

女性が梅毒を放置する最大のリスクは、妊娠をした時にお腹の赤ちゃんに影響が出ることです。
妊娠中に梅毒に感染したあるいは妊娠前に梅毒に感染していて放置をすると、流産や死産、早産、低出生体重児を出産する確率が高くなり、特に、梅毒は死産の感染原因の第2位とされています。

それにくわえて、胎盤を通して赤ちゃんに梅毒の原因菌が感染し、先天梅毒を発症して生まれるリスクが高くなります。

先天梅毒は生まれた時は無症状のことが多いです。しかし、生後数ヶ月以内に水疱性発疹、斑状発疹、丘疹状の皮膚症状、全身性リンパ節の腫れ、肝脾腫、骨軟骨炎、鼻閉といった症状が出現します。
さらに、生後2年以内に角膜炎や難聴を呈することが多いため、赤ちゃんの人生そのものに大きな影響を及ぼしてしまうかもしれません。

梅毒の症状がある際の対処法

梅毒の症状が見られた際にはすみやかに医療機関を受診して検査を受けましょう。梅毒の症状である発疹やしこりなどはほかの病気でも見られることがあるため、症状のみで梅毒と診断することは難しく、検査を受ける必要があります。

梅毒の検査は血液検査もしくは症状の出ている部分から体液が出ている場合には体液で行いますが、検査のみであれば匿名でも受けられます。

また、検査のみであれば医療機関でなくても地域によっては市区町村で検査が受けられることもあるため、名前を伏せて検査をしたいという場合には医療機関やお住いの市区町村へ電話で相談してみましょう。

梅毒は自然治癒は見込めないため、もしも梅毒と診断された場合には治療が必要です。治療は抗菌薬を服用して菌を死滅させるもので、治療をすれば完治が見込めます。しかし、神経症状が出ていたり、組織が破壊されていたりした場合にはその神経や組織を完全に修復することはできません。

また、パートナーのどちらかが梅毒に感染していた場合、もう片方のパートナーも感染している可能性が極めて高くなります。つまり、どちらか一方のみが治療をしてもまた、感染する可能性が高まるため意味がありません。

もしも、梅毒に感染していることが分かったらパートナーにも検査を受けてもらい、一緒に治療を行いましょう。

梅毒の症状についてのまとめ

梅毒の症状はほかの病気と似た症状が多いため、医師でも気づけないことがあります。さらに症状は再発はするものの一度は消失するため、治ったと思い放置するケースもあります。

しかし、梅毒の早期は人に感染させる可能性が極めて高い時期です。くわえて、梅毒を放置すると神経系に影響を及ぼし、死に直結する危険性もあります。

そのため、梅毒と思われる症状が見られたらすぐに検査を受けましょう。
特に、手足の裏に出る発疹(バラ疹)は梅毒の特徴的な症状ですので、この症状が見られたら梅毒を疑って検査をしてもよいでしょう。

早期に検査を受け、適切な治療をすれば重篤な症状を発症させずに梅毒は完治できます。

また、梅毒はパートナーのどちらか一方が治しても意味がないため、梅毒の症状が見られたら、パートナーとともに検査、治療を受けましょう。