性病ときくと、性器の痒みやぶつぶつなどをイメージする方が多いかもしれません。しかし、多くの性感染症では接触した部位に炎症が現れるため、男性では尿道炎を引き起こすケースも多いです。

今回は、排尿時・尿道の痛みと性病の関係について、原因や早期改善の方法などをご紹介します。

排尿時・尿道の痛みで考えられる原因

排尿時の痛みや尿道の痛みで考えられる原因として、まずひとつは「性感染症」が挙げられます。

コンドームを使用しないオーラルセックスや膣性交・肛門性交などによって、原因となるウイルスや菌が尿道口から尿道へと侵入することで尿道炎が引き起こされます。

また、性行為や自慰行為などによって尿道の粘膜が傷つくことにより細菌感染を起こすることもあります。陰部や肛門付近、性器を扱う手などが不衛生な状態であれば、尿道炎のリスクは高くなるため注意しましょう。

なお、女性は男性に比べて尿道が短いため、尿道炎だけでなく膀胱炎を併発することが一般的です。そのため、女性の場合には、尿道の痛みというよりも下腹部の痛みや違和感として実感することが多いです。

尿道の痛みとして実感するのは男性特有の症状ともいえます。

排尿時・尿道の痛みが見られる性病

ここでは、排尿時の痛みや尿道の痛みがみられる性病の種類について確認していきましょう。

排尿時・尿道の痛みが見られる性病①淋病

淋病とは、淋菌という菌による性感染症です。淋病の潜伏期間は2~7日と比較的短いため、性行為後の早い段階で異変に気付くことも多いです。

淋病はコンドームを使用しないセックス1回につき、30~50%の割合で感染するといわれるほど感染率の高い性感染症です。

排尿時痛や尿道の痛みを放置すれば、男性の場合は尿道から黄色い膿がドロッと出ることもあります。また、進行すれば精巣上体炎を発症し、男性不妊の原因となることもあるため注意が必要です。

淋病による尿道炎は他の尿道炎に比べて、症状が強く出るという特徴があります。

女性の場合は症状があまりみられないものの、進行すれば卵管炎や腹膜炎などを発症して不妊症の原因となることもあります。

排尿時・尿道の痛みが見られる性病②トリコモナス

トリコモナス原虫によるトリコモナス感染症でも、尿道炎が引き起こされることがあります。

トリコモナスの潜伏期間は10日前後です。トリコモナスは無症状で進行することが非常に多く、感染に気付きにくいという特徴があります。

男性の場合、症状が出たとしても違和感や軽い排尿痛に留まることが多いです。
女性の場合には、トリコモナスに感染すると黄色や緑色の異臭を伴うおりものが大量に分泌されます。

その他、外陰部のただれ・ヒリヒリとした痛み・排尿時のしみるような痛みなどを覚えることもあるため自覚しやすいといえるでしょう。

パートナーの女性に当てはまるような症状があれば、両者ともに検査を受けることが大切です。

排尿時・尿道の痛みが見られる性病③クラミジア

クラミジアは国内で最も感染者が多い性感染症です。

潜伏期間は1〜3週間で若年層での感染が多く、感染者の半数が無症状のため感染を広げるリスクが高いです。オーラルセックスを含む性的な接触によって尿道からクラミジアが侵入することにより尿道に炎症が現れます。

さらに、クラミジアは男性同士の肛門性交による感染も多く報告されています。肛門性交では尿道だけでなく、肛門への感染も考えられます。

一方、女性についても無症状の方が多いのが特徴です。放置すれば、子宮頚管炎・子宮内膜症・卵管炎などを発症することもあります。

また、クラミジアと淋病は高い確率で併発していることが多いです。検査を受ける際は同時に両方の検査を受けることをおすすめします。

排尿時・尿道の痛みが見られる性病④マイコプラズマ・ウレアプラズマ

マイコプラズマ・ウレアプラズマもまた、尿道に感染する性感染症のひとつです。

潜伏期間は1〜5週間と比較的長めですので、忘れた頃に症状が現れることもあるため注意が必要です。

男性では、尿道の違和感・痒み・排尿時痛などがみられ、尿道から膿が出てパンツに染みてしまうなどの尿道炎の症状が出ることもあります。

女性も場合には、おりものの増加や陰部の異臭などにより異変を感じることもあります。

尿道に違和感を覚えるようであれば、他の性病検査とともにマイコプラズマ・ウレアプラズマもチェックしておくと安心です。

排尿時・尿道の痛みが見られる性病以外の場合

冒頭でも述べましたが、排尿時の痛みや尿道の痛みは性病以外の原因も考えられます。

例えば、性行為や自慰行為などによって粘膜が傷つき、尿道へ細菌が侵入してしまうこともあります。

性器に触れた手や陰部や肛門付近が不衛生な状態であれば、尿道炎のリスクが高くなります。

なお、直接挿入を行っていない場合でも、感染部位や原因菌を含む精液・分泌液に接触する機会があれば感染の可能性はあるため注意しましょう。

直近で思い当たるような性行為がなくても、無自覚のまま保菌していることも考えられます。

つらい痛みを長引かせないためにも、念のため専門機関で検査を受けることが大切です。

性病の疑いがある際は性感染症内科へ

以下に当てはまる方は、性病による尿道炎を引き起こすリスクが高いです。性病が疑われる場合には性感染症内科へご相談ください。

  • コンドームを使用しない性行為を行った
  • オーラルセックスを受けた
  • 不特定多数との性行為を行った
  • 男性同士の肛門性交を行った

排尿時・尿道の痛みを放置した際のリスク

排尿時に違和感を抱いていても、相談するのが恥ずかしいと感じて受診を躊躇してしまう方もいらっしゃいます。

しかし、排尿時の痛みや尿道の痛みを放置していても良いことはありません。放置していれば病気が進行したり、不妊の原因となったりする可能性も考えられます。

次第に痛みが強くなることもありますので、我慢せずに早めに受診するようにしましょう。

排尿時・尿道の痛みのまとめ

尿道炎は適切な検査・治療を受ければ数日で症状が軽減することがほとんどです。つらい症状は放置せずに、まずは医療機関へ相談してください。

また、尿道炎の症状は違和感から始まることもあります。尿道の不快感やムズムズするような感じなど、少しでも気になる症状があれば検査を受けるようにしましょう。

特定のパートナーがいる場合には、両者ともに検査・治療を受けることが大切です。