性病を疑うような症状が現れた際、すぐに病院へ受診できる方はそう多くはありません。
デリケートな部分の病気であるがゆえに受診を躊躇して悩んでいる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
結論からいうと、性病を放置していても自然治癒することはありません。
次第に症状が強く現れたり、無症状のうちに重症化してしまったりする可能性も考えられます。
「陰部が少しかゆいけれど、そのうち治まるかもしれない…」
「不特定多数の人とセックスしているけれど無症状だからきっと大丈夫だろう」
など、不安な心に蓋をして過ごしているのであれば、一度医療機関へ受診することが大切です。
性病は自然治癒しない
冒頭でも述べましたが、性病が自然治癒することはありません。たとえ時間が経って症状が治まったからといって病気自体が治ったわけではないのです。
一度感染した菌やウイルスは治療を行わない限り、尿道や膣、口腔粘膜などに生息し続けています。
そのままにしておくと、無症状のまま感染を広げてしまったり症状を進行させてしまったりする可能性もあります。
重症化を防ぐためにも早期検査・早期治療を受けることが重要です。
性病を放置する際のリスク
では、性病を放置することにはどのようなリスクが挙げられるのでしょうか。ここでは、性病の種類ごとに考えられるリスクについて解説します。
クラミジアを放置するリスク
クラミジアを放置すると、男女ともに体内で感染が広がってしまいます。男性の場合であれば尿道から睾丸へ、女性であれば膣から子宮や卵管、腹膜へと徐々に炎症が進んでいきます。
女性の場合、初期は無症状のことがほとんどですが、進行すれば不妊症や子宮外妊娠のリスクが高くなるため注意が必要です。
また、オーラルセックスによってクラミジアが喉に感染した場合には、風邪のような症状からはじまり、次第に炎症が進んで行きます。
放置した場合、咽頭炎や扁桃炎を引き起こし、つらい発熱や痛みを引き起こすこともあります。
淋病を放置するリスク
男性の場合には、淋病の発症によって尿道炎が引き起こされます。初期は尿道の違和感やかゆみなどの軽い症状から始まることが多いですが、放置していれば排尿時に激しい痛みを感じるようになります。
また、尿道からドロッとした黄色い膿が排出されることもあります。尿道から精巣まで感染が進行すれば、精巣上体炎といって陰嚢が腫れたり痛みを感じたりすることもあります。
ここまで炎症が進めば、痛みや腫れによって歩行困難となり、日常生活に支障がでることも考えられます。
女性の場合は、黄色いおりものの増加や排尿時痛などがみられることもありますが、多くの場合は無症状です。
症状が現れないことが多いため感染自体に気付かないことがありますが、そのまま放置してしまうと子宮内膜炎や卵管炎などを引き起こします。
その結果、不妊症や流産などに繋がる恐れもあるため注意が必要です。
ヘルペスを放置するリスク
性器ヘルペスでは、性器や肛門周囲にできた水疱性の発疹により強いかゆみや刺激痛が現れます。
場合によっては、排尿時や歩行時に非常に強い痛みを感じることもあります。また、性器ヘルペスは口腔粘膜にも感染します。
口腔内や唇に水ぶくれができ、唾を飲み込むだけでも激痛を伴うこともあるため、オーラルセックスでの感染には注意が必要です。
ヘルペスは再発しやすいため、口から性器、性器から口へと感染を繰り返すことも考えられます。
梅毒を放置するリスク
梅毒は長期間にわたって様々な症状が現れます。初期ではしこりのようなものが現れますが、その後は症状が治まり、数週間後に再び発疹などの症状がみられるようになります。
さらに、その症状が治まると数年〜数十年の間、無症状のまま経過します。無症状の期間に治ったと勘違いして放置をしていると、最終的には骨・皮膚・肝臓などに腫瘍ができることもあります。
また、心臓・血管・脳などにも合併症が引き起こされ、最悪の場合は死に至ることもあります。
HIV・エイズを放置するリスク
HIV感染では、無症状のまま徐々に免疫システムが破壊されていきます。それによりエイズを発症すれば、日和見感染や悪性腫瘍などの様々な合併症が引き起こされます。
一度エイズが発症した場合、免疫力は著しく損なわれた状態といえます。
そのため、治療の効果が得にくくなり、死に至ることもあります。無症状だから安心とは考えずに、できるだけ早期に検査を受けることが重要です。
性病に感染している可能性が高い症状
では、どのような症状が性病に感染しているサインになるのでしょうか。ここでは、性病に感染している可能性が高い症状について解説します。
なお、性病に感染していても症状が現れないこともあります。
たとえ症状が出ていなくても、不特定多数と性行為の機会がある方やパートナーが変わった方などは、念のため検査を受けておくと安心です。
性病に感染している可能性が高い症状①クラミジア・淋病
クラミジアや淋病の場合、男性では尿道炎により以下のような症状が現れます。
・尿道の違和感やかゆみ
・排尿時の痛み
・尿道からの黄色い膿
女性の場合には以下のような症状が現れることがありますが、女性の場合は男性に比べて症状が出にくいことが多いです。
・性器の違和感やかゆみ
・黄色いおりものの増加
クラミジアと淋病は併発していることが多いため、同時に検査しておくのが良いでしょう。
性病に感染している可能性が高い症状②ヘルペス
性器ヘルペスでは性器や肛門周囲に以下のような症状がみられ、発熱を伴うことおもあります。
・不快感やかゆみ
・ヒリヒリとした刺激痛
・水ぶくれ
オーラルセックスによって咽頭に感染した場合には、咽頭炎や扁桃炎の症状がみられます。
・のどの強い痛み
・嚥下痛(飲み込む時の痛み)
・発熱
・扁桃腺の腫れや膿
・頸部リンパの腫れ
性病に感染している可能性が高い症状③梅毒
初期は、性器・肛門・唇などに豆粒程度の大きさで痛みのないしこりが現れるのが特徴的です。また、そこから数週間後に発疹が全身に広がります。
しかし、この症状もしばらくすると消失してしまうため、しこりや発疹が出た段階で検査を受けることが望ましいでしょう。
性病に感染している可能性が高い症状④HIV・エイズ
HIV感染では、感染から2~6週間のうちに風邪やインフルエンザのような以下の症状が現れます。
・発熱
・リンパの腫れ
・のどの痛み
・筋肉痛
・倦怠感
・頭痛
・皮疹
しかし、その後症状は治まり、徐々に免疫力が弱っていきます。エイズを発症する段階では、免疫力は著しく低下しています。
たとえHIVに感染していてもエイズを発症する前に治療を開始できれば、治療効果は十分に得られる可能性が高いです。
不特定多数との性行為や男性同士のアナルセックスなどの機会がある方はHIV感染のリスクが高いため、検査を受けるようにしましょう。
まとめ
「排尿時に少しだけ違和感があるな…」「おりものの量が少し増えた気がするな…」という程度の症状では受診に踏み切れない方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、性感染症は、分かりやすく症状が現れるものだけでありません。そのような些細な変化に気付くことで早期発見・早期治療に繋がることもあります。
そのまま放置してしまえば徐々に進行し、自覚症状が現れる頃には病気が重篤化しているケースもあります。
ご自身やパートナーとのより良い将来のためにも性病検査を受けることが大切です。