性器ヘルペスは、性行為によって感染する性感染症です。性器付近に不快感や痛みを感じ、小水疱を形成します。常にウイルスが体内に潜伏している状態であり、「再発」というリスクを抱えている少々厄介な感染症です。
本記事では、性器ヘルペスについて解説します。症状や感染経路、放置しておくことの懸念点についても詳しく紹介していますので、性器ヘルペスについて知りたい方はぜひ参考にしてみてください。
性器ヘルペスは性行為の種類によって変わる症状
性器ヘルペスとは、単純ヘルペスウイルスに感染することで発症する性感染症です。性器やその周辺に小水泡を形成し、痛みを伴う潰瘍ができます。性感染症のなかでもメジャーなもので、性器クラミジアに次いで感染者が多いとされています。
単純ヘルペスウイルスは1型と2型があり、口唇ヘルペスは1型、性器ヘルペスは2型となることが多いといわれていました。しかし、最近ではオーラルセックスが一般化してきた背景もあり、1型のウイルスが性器に感染したり、2型のウイルスが口に感染したりするケースが増えて両者の境目はなくなりつつあります。
性器ヘルペスは性器周辺に症状が出現しますが、口唇ヘルペスは名前のとおり唇やその周辺にあらわれます。最初はピリピリとした違和感やかゆみが生じ、その後軽い痛みを伴う小水泡ができます。
いずれも一度感染してしまうと、症状が治まっても⽣涯にわたってウイルスが体内に潜伏するという厄介な感染症です。
主な性器ヘルペスの症状
性器ヘルペスの症状は、感染後2~10日ほどで出現し始めます。最初の感染時は比較的強い症状があらわれやすく、性器付近の不快感やかゆみの後に発熱や全身倦怠感、リンパ節の腫れといった症状がみられます。
男性も女性も同じような症状がみられますが、女性の方が痛みや不快感を比較的強く感じやすい傾向にあるのが特徴です。なかには、排尿ができないほどの痛みを感じることもあります。一方で、免疫力によってウイルスの活動が抑えられていると、感染しても症状があらわれずウイルスが潜伏するというケースもあります。
また、性器ヘルペスの大きな特徴として、一度回復してもまた再発するということが挙げられます。風邪や疲れ、ストレスなどによって免疫力が落ちると再発するといわれていますが、タイミングは人それぞれです。頻度も人によって異なり、年に1回という方から、毎月のように再発する方までさまざまです。
なお、再発には前兆があり、小水疱ができる前に、性器付近のチクチク・ヒリヒリといった違和感を感じたり、⾜のつけ根に神経痛が⽣じたりします。再発の前兆を感じたら、すぐに対処するのがベストです。しかし、再発の場合は症状が軽い傾向にあるため、何らかの症状が出ていても約6割の人は性器ヘルペスに気付かないともいわれています。
性器ヘルペスの感染経路
性器ヘルペスは、感染している相手との性行為によって感染します。また、口唇ヘルペスに感染している相手とのオーラルセックスによっても感染するのが特徴です。症状が出ていない場合でもウイルスは体内に潜んでいるため、知らず知らずのうちに感染を広げているというケースも少なくありません。
また、性行為以外にも、ウイルスが付着したタオルや便座などを介して感染する場合もあります。女性の場合は、浴室の床から感染する例もあるようです。感染経路が多いこともあり、男性よりも女性の感染者の方が多い傾向にあります。
性器ヘルペスの症状を放置してしまうことのリスク
性器ヘルペスは、免疫力が十分にあるときには症状が出現しないという特徴があります。それゆえに、再発時には病院を受診せずに放置してしまう方も少なくありません。しかし、性器ヘルペスのウイルスは常に体内(神経節)に潜伏しています。
免疫力があるときはよいですが、忙しくなったり疲れたりしたときに、ひどい症状が出現するかもしれません。また「いつ再発するかわからない」という不安を抱えなければならない点も問題です。
症状がわずかでも軽視せず、年に何回再発しているかカウントしてみましょう。もし年間6回以上の再発を起こす場合は、再発予防治療をおこなう余地があります。再発予防治療とは、抗ヘルペスウイルス薬を毎日1錠、1年間内服して、ウイルスの増殖を抑える治療法です。
ウイルスを取り除くことはできませんが、ウイルスの活性を抑制することで、再発時の治療期間を短縮したり、症状を軽度に抑えたりする効果が期待できます。
また、最近保険適用になった治療法「PIT療法」も注目されています。PIT療法とは、再発の前兆を感じたときに薬を服用して、症状の出現をくい止めたり、症状を軽度に抑えたりする治療方法です。2回の服用で治療が完結するという手軽さも魅力です。
あらかじめPIT療法の薬を常備しておくことで、安心感を抱きながら日常生活をおくることができます。
性器ヘルペスの症状のまとめ
性器ヘルペスは、一度感染してしまうと長く付き合っていかなければならない性感染症です。そのため、感染者の多くが再発や感染拡大の不安といった精神的な負担を抱えがちです。
しかし、現在では、治療によって再発を予防したり症状を軽症に抑えたりできるようになってきました。「忙しいから」「人にバレるのが恥ずかしいから」という理由で受診しない方もいますが、まずは専門医に相談してみましょう。