梅毒は、性行為によって起こる感染症と考えるかもしれません。しかし、梅毒は性行為以外でも感染すると考えられています。本記事では梅毒の原因と感染経路について詳しく解説します。

梅毒の感染経路を理解しておけば梅毒の感染を予防できるでしょう。

梅毒の主な感染経路

梅毒は病変部が粘膜に付着することで、梅毒の原因となる梅毒トレポネーマが侵入して感染します。梅毒の主な感染経路は性行為による感染です。感染から1年未満の梅毒患者と、性行為をした際の感染率は約30%と推定されており、感染率が高いことが分かります。特に梅毒に感染してから、10週間程度は梅毒トレポネーマの感染力が高く、感染しやすい時期です。ここでは性行為による具体的な感染経路について解説します。

梅毒感染経路①性器→性器

性器同士の接触で梅毒は感染します。膣性交による感染はもちろん、膣内に挿入をせずに性器をこすりあわせる疑似性交でも梅毒は感染するのです。病変の出ている性器には梅毒の原因となる梅毒トレポネーマが潜んでいるため、性器を挿入することで確実に感染します。

しかし、性器のみならず精液や膣分泌物にも梅毒トレポネーマは潜んでいるため、性器を挿入しなくても、性器同士が触れ合う、分泌物や精液が粘膜に付着するだけでも感染する可能性は非常に高くなるのです。

梅毒感染経路②性器→口

性器と口腔が接触する、いわゆるオーラルセックスも梅毒の主な感染経路です。もしも、ペニスに病変部がある人にフェラチオをした場合には、自分の唇や口の中に感染する可能性があります。

また、唇や口の中に梅毒の症状が出ている人からフェラチオをされた場合には、自分のペニスに感染する可能性があり、双方で感染するリスクが高いと考えられています。

口の中や唇にしこりや潰瘍ができている場合には、梅毒に感染している可能性があるため、性行為を避けるのがベストです。

梅毒感染経路③口→口

口の中に梅毒が感染した場合には、唾液のなかに梅毒トレポネーマが潜んでいる可能性があります。そのため、キスでも感染する可能性もあるのです。

梅毒感染経路④性器→肛門

性器から肛門による感染が、梅毒の感染経路としてもっとも多いといわれています。性器に病変部があった場合に、肛門へ感染します。梅毒トレポネーマは国立感染症研究所でも培養方法がないといわれているため、梅毒トレポネーマそのものが増殖して、菌の量が増えることはありません。しかし、低酸素状態を好む梅毒トレポネーマは肛門内では生存しやすいため、感染しやすくなると考えられているのです。

また、梅毒は病変部から感染することが分かっています。肛門以外のほかの部位の場合には、感染部位を直接目で見て確認できるため、予防も可能です。しかし、肛門への感染は、直腸の中を直接目で見て確認できないため、ほかの部位よりも感染リスクは高まると考えられています。さらに、直腸は傷つきやすいため、性器が侵入したことで直腸が傷つき、その傷ついた部分から梅毒トレポネーマが侵入しやすくなってしまいます。

梅毒感染経路⑤母→子

梅毒に感染している女性から生まれた子どもは、母親の血液を介して梅毒に感染することが分かっています。これを先天梅毒といい、難聴,、失明(網膜炎)をはじめとする目の疾患、 精神発達遅滞をもって生まれてくる可能性が高いです。

母子感染症である先天梅毒は2012年までは数例だったものの、2012年以降は年間20例を超えています。

梅毒の原因として可能性がかなり低い感染経路

梅毒は性行為のみで感染するものではありません。可能性としては極めて低いものの、梅毒の感染経路には傷からの感染があります。梅毒の原因となる多量の梅毒トレポネーマが傷のある手や指を汚染した場合に発症します。たとえば、剃刀を使いまわしたり、性行為時に使用したコンドームなどを素手で長時間触ったりすることで感染するとされているのです。

しかし、梅毒トレポネーマは低酸素状態でしか生存できないとされているため、体外に排出されてしまうと長期間感染力を保ちながらの生存はできません。梅毒トレポネーマの生存環境を考えると、体外を離れた状態で人に感染する可能性はひじょうに稀と言われているのです。

一昔前には輸血による感染も考えられており、実際に輸血によって梅毒に感染するケースもありました。しかし、現代では輸血による感染は劇的に減少しており、輸血による感染報告はありません。ただし、緊急輸血のため、ドナーから採取した血液製剤をすぐに使用するというケースであれば梅毒の検査がなされないままに輸血をするため、輸血によって感染をする可能性もゼロではないということになります。

梅毒の感染原因となる行為

梅毒の感染原因となるのは性行為です。性的な接触によって性器同士あるいは性器とそれ以外の粘膜との接触が主な感染原因で、膣性交、肛門性交、口腔性交が感染原因となる行為にあたります。とくに、傷口があると感染しやすくなるため、傷ができやすい肛門性交においては、梅毒トレポネーマが感染しやすいといえるでしょう。

また、口腔内に梅毒トレポネーマが潜んでいた場合にはキスによって感染する可能性もあります。

梅毒の感染経路の原因まとめ

梅毒の感染経路となる主な原因は性行為であるため、性行為時にコンドームを装着したり、梅毒の病変部を確認したら性行為を控えたりすれば感染を予防できます。

膣性交のみが梅毒の感染原因と思われることもありますが、膣性交よりも肛門性交の方が感染する可能性は高いです。また、梅毒トレポネーマが口腔内に感染していた場合にはキスだけでも感染する可能性が高まります。

ほかにも、非常に稀な例ですが傷口からの感染や、輸血での感染もあり、一概に性行為のみが梅毒の感染経路になるわけではありません。

また、梅毒の病変部からHIV(エイズウイルス)が侵入しやすいため、梅毒に感染して治療をせずに性行為を続けていると、HIV感染率が高くなるといわれています。また、梅毒は感染から10週間程度は感染力が高く、ほかの人に感染させる可能性が高まります。

そのため、梅毒に感染した可能性がある場合には早めに検査を受け、治療をしましょう。